2018年1月18日木曜日

音楽と記憶の関係


このような返信がありましたので、自分が思うことを書いてみようと思います。

「人間は思い込みでできている」
まずこの話を先にするべきです。

人間の生活、感覚、習慣は否応なしに「環境」に影響を受けます。
日本という国は島国であり、外界から隔絶された環境ですのであまりこの意識はしませんが、現代多様化しているのでその一旦を見る事ができます。

例えば、「炊きたてのご飯」と「焼き立てのパン」の違い。
両方主食ですが、住んでいる環境によって経験が異なります。
毎朝ご飯を食べる家庭と、毎朝パンを食べる家庭では、2つの印象は全く異なるのです。
両方とも良い匂いだな、というのは感じれても、そこに様々な感情が入るかどうかは、その人の経験とおかれている環境によるのです。

嗅覚とは形の無い感覚であり、音とほぼ同じです。
経験とは、一つの感覚だけに特化したものではありません。
味覚、嗅覚、聴覚、視覚、触覚、全ての複合の蓄積が「経験」です。
そして、その一つがスイッチとなって、他の感覚を呼び起こしたり、
あるいは逆に「経験」を思い起こさせたりするわけです。

ゲーム音楽について言えば、まず【ゲームを楽しんだ環境】が重要です。
ゲームとは、もちろんの事ながら、自らの選択と意思でするものです。
イヤイヤやらなければならないものでは無い、というのを前提としています。
ゲームをする、というのを「行動」として受け取った時、その動機について考えると
「遊びたい」という(酷く大雑把ですが)感情に全て繋がっています。
つまり、ゲームとはポジティブな感情としか結びついていないものなのです(本来は)

その、ポジティブな感覚とだけ結びついているゲームの経験は
当然の事ながら、複合的な要素で「経験」として結晶化されています。
その結晶を分解すると、視覚、触覚、聴覚、そして感情に分けられます。

ゲーム音楽が持つ特徴。
それは、ポジティブ経験を想起する、という点にあります。
それは実は…、音楽的な内容とは、ほぼ無関係な状態にあります。

バトル曲。人気ですね。戦いの音楽です。
今から25年くらい前のスーパーファミコン全盛期、私の両親に言われた言葉があります。
「そんなに焦らせるような音楽ばっかり聞かされて辛くないか?」

バトル曲はRPGにおいて、そもそもが「危機」を想起させるための音楽ですから
焦らせる、という発想は正しいことになります。クリエイターの勝利です。
しかし、ゲームをするという経験が無い世代において、ゲーム音楽は
【置かれている環境やシーンを表現するための音楽】に過ぎません。
当然の事ながら、娯楽としての音楽として聞く事ができないため、
「がちゃがちゃうるさいだけの音楽」になってしまいます。

ジャズ。人気です。
私も音楽家の端くれですので、ジャズに触れたことくらいあります。
ですが、正直な話、ジャズと良い想い出が直結していないため、良さが良くわかりません。技術的な要素はわかっても、良さを理解するに至っていないのです。

音楽とは、必ず「経験」と結びついて感動を起こします。
(「経験したことがない」というのも感動を起こす一つの要因になるでしょう)

映像として映し出されるゲームを楽しんだ世代においては
視覚と聴覚はとても重要な役割を果たします。
例えば、ファミコンの音とドット絵の関係です。
ドット絵は、ひと目見ただけでゲームを想起させます。
ファミコンの音も、ゲームを想起させるのです。(日本人だけに限った話かも)
その2つを結びつけると、本来存在していない「ゲームの存在」を意識付けすることが出来ます。

初めて聞く音楽なのに、初めて見る絵なのに
あたかも過去に自分が既に経験済であるかのような親近感を引き出す事ができるのです。
人間は「あ、それ知ってる」は何よりも強い感覚です。
音楽を作り出す上で、その「あ、それ知ってる」をいかに上手く利用していくかが
多くの人に受け入れてもらえる条件となるのです。

BGMと体験を切り離すと印象が変わってしまうのではないか?

答えは「YES」です。
その音楽を聞いた環境の違いによって、印象は大きく異なります。

検証案
10人のグループを2つ以上準備します。Aグループ、Bグループ、Cグループとします。
誰も知らないBGMを準備し、それを聞いてもらい、どんなシーンに合うかを書き出してもらいます。
ただし、B、Cグループには、BGMとは全く関係ない写真(イメージ)と共に音楽を聞いてもらいます。(意識させないように自然に)
Bには、ドライブをするイメージを
Cには、女の子たちが遊ぶイメージを
Aには、何もイメージを与えない

すると、どんなシーンに合うか、という結果はおそらく大きく変わると思われます。
(検証してみたいもんですなぁ)

視覚情報を与えるだけで、音楽の印象は大きく異る。
これはおそらく、写真じゃなくて「単色」でも変わると思われます(検証したいなぁ)

もし結果が予想通りなら…、人間が音楽を聞く際に過去の経験が大きく作用している事がうかがい知ることができるのです。

以前「DTMer meeting」で企画した「オレが考えたシリーズ」では
一つのシーンに対して、多くのクリエイターが曲を付ける、という検証をしました。
結果は驚くべきもので、全員全く違うのです。
ひとつも被らない。
話に聞くと、好きなゲームのジャンルが全員全く違うのです。

万人に受け入れられるBGMというのは極めて難しい事がわかりました。
そんな中でも、サウンドクリエイターはシーンのBGMとして
ユーザーが違和感を覚えないように、と神経をすり減らして音楽を付けます。

0 件のコメント:

コメントを投稿